肩甲骨骨折は、肩にある平たい骨である肩甲骨が外力により損傷することを指します。
骨折は、肩甲骨の体(中央の平らな部分)、肩峰(上部にある平らな突起)、関節を形成する部分など、さまざまな部位に発生します。
肩甲骨は多くの筋肉で保護されているため、骨折の発生率は全体の骨折の約0.5~2.4%と少ないですが、交通事故や高所からの落下といった重度の外傷で発生することが多いです。
成長板(骨端板)とは、骨の成長に関わる柔らかい部分です。
若い犬ではまだ完全に骨化していないため、強い力が加わるとこの部分が損傷し、骨折につながります。
肩甲骨では、関節の一部を作る「関節上結節(かんせつじょうけっせつ)」に成長板が存在します。
筋肉(とくに上腕二頭筋)の力で引き離されることが骨折の原因です。
放っておくと関節の形がゆがんだままくっついてしまう恐れがあるため、特に若い犬での肩のケガには注意が必要です。
肩甲骨骨折の主な原因は、交通事故や高所からの落下などの外傷です。
また、肩甲骨の骨折を起こすような強い衝撃では、他の損傷が同時に発生しているケースも少なくありません。
骨折全体の56~70%で肺損傷や肋骨骨折などが併発します。
肩甲骨骨折はどの年齢でも起こり得ますが、特に若齢の犬で多く見られます。
成長期の犬は骨が未熟なため、特に成長板骨折が発生しやすいです。
また、活発な中型~大型犬は動きが大きいため、ジャンプや転落によるリスクが高いとも言われています。
肩甲骨を骨折した犬には、以下のような症状が見られます。
肩甲骨は筋肉で固定されているため、骨がずれていないように見えることもあります。
見た目だけで判断せず、違和感を覚えたら早めに動物病院を受診しましょう。
肩甲骨骨折の治療は、骨折の部位やズレの程度によって異なります。
安定した骨折では保存的治療(安静、包帯固定)が一般的です。
一方で、不安定な骨折や関節内骨折では、手術による内固定が必要です。
手術ではワイヤーやプレートを使ってしっかりと骨をつなぎ、関節の動きが損なわれないように治療します。
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手術が必要かどうかは、骨折の安定性と症状に依存します。
不安定な骨折や関節内骨折、重度の変形がある場合には手術が推奨されます。
関節上結節の成長板骨折なども、関節の変形を防ぐために手術が行われることが多いです。
その一方で、筋肉で安定している骨折は保存的治療で回復することが多いです。
骨が完全につくまでの期間は、健康状態や年齢によります。
多くの場合では、6~8週間程度が一般的です。
通常2~4週間は安静と包帯で過ごします。
それ以降、運動は引き綱を使った制限的な散歩に限られ、室内でも過度な動きがないよう注意が必要です。
また、術後の経過によってはリハビリテーションが患肢の機能回復と筋力維持に重要な役割を果たします。