排便や排尿、呼吸など、あたりまえの事が苦痛なく行える様、患者とご家族にとって最善の外科的治療をご提案します。
特に排便障害を伴う会陰ヘルニアや尿路の結石や腫瘍、短頭種気道症候群の予防治療に力を入れています。
肛門周囲(会陰部)の筋肉が薄く弱ってしまい、排便障害、排便時の疼痛、出血などを伴う病気です。時に膀胱が反転してしまい排尿困難となることもあります。その場合は緊急処置が必要になります。当院では医療用メッシュを用いた整復手術を行います。
尿路の結石や腫瘍は、排尿困難、頻尿、血尿などの症状や、命を脅かす腎不全などを引き起こす事があります。膀胱結石や腫瘍の摘出、尿管結石などによる急性腎不全の緊急回避処置、尿路変更、SUBシステム設置による腎臓から膀胱へのバイパス形成等を行います。
パグやフレンチブルドックなどの短頭種に多く発生し、喘鳴音を伴った呼吸困難が認められ、重症化すると呼吸不全や失神することもあります。症状の慢性化や悪化を防ぐため早期の段階で外鼻孔狭窄や軟口蓋過長の外科的治療を行います。
診断:狭窄性外鼻孔
治療:外鼻孔形成術。狭窄した外鼻孔を拡げる手術をしました。術後、いびきは消失し息がしやすくなりました。手術の翌日、無事退院できました。
狭窄性外鼻孔は短頭種気道症候群のひとつでフレンチブルドックやボストンテリアに好発します。短頭種気道症候群は徐々に気道が狭くなり呼吸困難を起こすことがあります。若齢時に早目に外鼻孔形成術を行うことで気道が狭くなるのを抑制します。避妊去勢手術と同時に実施することがあり、短期間で退院できます。手術により鼻鏡の色が変化することが稀に認められます。
診断:会陰ヘルニア
治療:医療用メッシュを用い会陰ヘルニアの整復をしました。術後管理のため1週間ほど入院し無事退院しました。現在、排便はスムーズで症状の再発も認められません。
会陰ヘルニアは直腸を支える直腸周囲の筋肉が萎縮してしまい、直腸内に便が異常に停滞してしまい排便困難となります。停滞した便のため肛門の脇が膨らみ、便が出づらく、排便時の痛み、出血を伴うことが多いです。ひどくなると膀胱なども脱出し、尿が出づらい排尿障害や、それに伴う腎不全を引き起こし命に関わることもあります。治療法は萎縮した筋肉の代わりに医療用メッシュによって直腸を支えることにより便の停滞を防ぎます。さらに状況に応じて結腸固定や膀胱固定を行います。
この病気は中高齢の未去勢雄に多く、去勢手術によりある程度予防することができます。ウエルシュ・コーギーやボストンテリアなど尻尾の短い犬種では筋肉の萎縮が起こりやすいので特に若齢期の去勢手術が重要となります。