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コーギーに多い変性性脊髄症とは|原因・症状・治療について解説

2025年12月07日コラム

コーギーに多い変性性脊髄症とは|原因・症状・治療について解説

上を見上げるコーギー

「最近、愛犬が後ろ足を引きずるように歩いている」
「お散歩に行きたがらなくなったけど、年齢のせい?」
「コーギーは足腰の病気が多いと聞いて、少し気になっている」
そんな心配や悩みはありませんか?
もしかすると、それは変性性脊髄症の初期サインかもしれません。

変性性脊髄症は、ウエルシュ・コーギー・ペンブロークで比較的多く見られ、ゆっくり進行していくのが特徴です。
この病気は痛みがないため、年のせいかなと見過ごされることも少なくありません。
しかし、早めに気づいてあげることで、これからの生活をより快適にしてあげることができます。

この記事では、変性性脊髄症の原因や症状、診断、家庭でできるケアについて、わかりやすくお伝えします。
ぜひ最後までお読みいただき、コーギーの変性性脊髄症への理解を深める参考にしていただければ幸いです。

コーギーに多い変性性脊髄症とは

変性性脊髄症は、脊髄が徐々に損傷して麻痺を起こす病気です。
この病気は痛みを伴わず、少しずつ後ろ足に力が入らなくなるのが特徴で、段々と歩くのが難しくなっていきます。
最終的には麻痺で呼吸困難を引き起こすため、命に関わる病気です。

変性性脊髄症は次の犬種で多くみられます。

  • ウエルシュ・コーギー・ペンブローク
  • ジャーマン・シェパード
  • バーニーズ・マウンテンドッグ
  • トイ・プードル
  • フレンチ・ブルドッグ

日本では特にコーギーでの発症が多く、遺伝的な要因が深くかかわっています。
初期は老化と見分けがつきにくく、年のせいと見過ごされることが多いため、早期発見がとても大切です。

床に伏せるコーギーの子犬

 

コーギーに多い変性性脊髄症の原因とは|SOD1遺伝子の正体

変性性脊髄症の主な原因は、まだはっきりわかっていませんが、SOD1遺伝子の異常が関係しているのではないかと考えられています。
この遺伝子は、人では筋萎縮性側索硬化症(ALS)との関連が指摘されているものです。
SOD1遺伝子に異常があると、脊髄の神経が徐々に障害を受け、少しずつ後ろ足から麻痺が進行していきます。

ある研究では、日本国内のコーギーの約半数が、変性性脊髄症の発症リスクを持っていると報告されています。
この遺伝子の有無は、DNA検査で確認することが可能です。

コーギーの変性性脊髄症でみられる症状

変性性脊髄症は、ゆっくり時間をかけて進行していきます。
初期症状はわかりにくいことが多いため、ささいな変化に気づくことが大切です。
コーギーは明るくて活発な性格の子が多いため、多少の不調があっても元気にふるまってしまうことがあり、症状に気づきにくいこともあります。

この病気は、進行の段階ごとに、症状が次のように変わっていきます。

初期

  • 後ろ足をすりながら歩く
  • 歩くときにふらつく
  • 段差や階段でつまずく

中期

  • 後ろ足を交差させるように歩く
  • 立ち上がるのに時間がかかる
  • 排尿、排便のコントロールが難しくなる

末期

  • 自力で立てなくなる
  • 前足にも力がはいらなくなる
  • 呼吸困難や排尿困難が起こる

コーギーの変性性脊髄症の治療とケア

残念ながら、現時点では根本的な治療法は確立されていません。
しかし、病気の進行を遅らせ、愛犬のQOLを保つためのサポートは可能です。

リハビリテーション

コーギーはもともと活発で運動が大好きな犬種です。
そのため、動けなくなることは大きなストレスになります。
水中トレッドミルやストレッチなどのリハビリ運動は、筋肉の衰えを防ぎ、関節の柔軟性を保つのに効果的です。
水中では体重の負担が軽くなるため、コーギーの胴長体型でも無理なく運動ができます。
リハビリは、専門スタッフの指導を受けながら、愛犬のペースでゆっくり継続することが大切です。

体重管理

変性性脊髄症が徐々に進行すると、動きにくさから運動量が減り、太りやすくなります。
胴が長く腰に負担がかかりやすいコーギーにとって、体重の増加は症状を悪化させる大きな要因になります。
体重を維持することで前足や腰への負担を減らし、少しでも動きやすい状態を保ちましょう。
体重のコントロールが難しい場合は、カロリー控えめのフードを取り入れるのもおすすめです。

足先の保護

後ろ足の力が弱くなると、歩く時に足先を地面にこすってしまうことがあります。
そのままにしておくと、すり傷や爪の損傷が感染の原因になることもあります。
犬用の靴下やブーツ、保護パッドを使って、足先を守ってあげましょう。
特にコーギーは足が短く地面との距離が近いため、摩擦の影響を受けやすい点にも注意が必要です。

生活環境の工夫

コーギーは胴が長く、足が短いため、少しの段差でも負担がかかりやすい犬種です。
歩行が難しくなってきたら、次のような環境づくりを意識しましょう。

  • 足を滑らせないように床にマットを敷く
  • 段差をなくして、バリアフリーにする
  • 床ずれを防ぐマットを利用する
  • 必要に応じて車いすや介護用品を利用する

小さな工夫でも、愛犬の負担を減らし暮らしを快適にすることができるでしょう。

外で目をほそめるコーギー

まとめ

コーギーは人気の高い犬種ですが、変性性脊髄症を発症しやすい傾向があります。
この病気は後ろ足の麻痺から始まり、徐々に前足や上半身に症状が広がっていきます。
進行すると呼吸や排尿が困難になることもあり、現時点では根本的な治療方法が見つかっていない病気です。
早期発見と適切なケアによって、愛犬のQOLをできるだけ長く保つことが治療の中心になります。

当院では、変性性脊髄症の診断、治療、リハビリのご相談も受け付けています。
歩き方が気になる、後ろ足がふらつくと感じたら、どうぞお気軽にご相談ください。

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