会陰ヘルニア

概要

会陰ヘルニアは、肛門周囲の筋肉や結合組織が弱くなることで、直腸、膀胱、前立腺などの臓器が肛門周辺の皮膚の下に突出する病態です。主に高齢の未去勢雄犬に見られますが、猫でも稀に発生することがあります。直腸の圧迫によって正常な排便が困難になるほか、重度の場合には膀胱が閉塞し、排尿困難や急性腎不全を引き起こすことがあります。早期の発見と治療が重要であり、未去勢犬の場合は定期的な健康診断を受けることが推奨されます。

疫学

会陰ヘルニアは、特に高齢の未去勢雄犬に一般的に見られる疾患です。年齢が進むほど筋肉や組織の弛緩が進み、発生リスクが増加します。よく吠える犬や尻尾の短い犬種でも会陰部を構成する筋肉が薄く発症しやすいとされております。
猫での発症は非常に稀ですが、慢性的な便秘や排便困難が原因で発生することがあります。

症状

会陰ヘルニアの主な症状には以下のものがあります。

・排便困難
直腸の圧迫により、便が出にくくなることが多いです。

・肛門周囲の腫れ
肛門の片側または両側に膨らみが見られます。

・排尿困難
膀胱が圧迫されることで、尿が出にくくなる場合があります。

・嘔吐や食欲不振
重度の場合、腹部の不快感や痛みにより嘔吐や食欲不振が見られることがあります。

症状が見られた場合は迅速な診察が必要です。特に排尿困難や急な肛門周囲の腫れが見られる場合、緊急の治療が必要となることがあります。

診断

身体検査と直腸検査にて診断します。肛門周囲の腫れや臓器の脱出を確認することが可能です。また、超音波検査やX線検査を利用して、脱出した臓器の状態や位置を詳しく調べることができます。尿検査や血液検査も行い、腎臓や膀胱の機能を評価することも重要です。

治療法

治療の基本は外科療法であり、会陰ヘルニアの修復術が行われます。手術では、弱くなった筋肉や組織を補強し、脱出した臓器を正しい位置に戻します。腸がヘルニアしてしまう場合は腸を腹壁に固定する場合もあります。未去勢の場合、再発を防ぐために去勢手術が同時に行われます。
術後の管理として、抗生物質の投与や痛み止めの使用が一般的です。また、便秘を防ぐための食事療法や緩下剤の使用も行われることがあります。手術の適応は症状の重症度や全身状態によって判断します。

予後

早期の診断と治療が行われた場合、一般的に良好です。手術を受けた犬の多くは正常な生活を取り戻すことができます。しかし、治療が遅れた場合や再発が起きた場合には、再手術が必要となることもあります。特に膀胱が脱出した場合は、急性腎障害や腹膜炎などの生命を脅かす合併症が発生するリスクがあります。そのため、特にリスクの高い犬種や高齢の犬では、定期的な健康診断と早期の治療が重要です。

参考文献

・Fossum, T. W. (2018). Small Animal Surgery. Elsevier.

・Tobias, K. M., & Johnston, S. A. (2017). Veterinary Surgery: Small Animal. Saunders.

・Boothe, H. W. (2000). Perineal Herniorrhaphy in Dogs and Cats. Veterinary Clinics of North America: Small Animal Practice.