腫瘍には犬種ごとに好発傾向があり、特定の症状が見られた際に腫瘍を疑うことが早期発見につながります。
・大型犬(レトリバー系):突然立てなくなったときは腹腔内腫瘍破裂や**心タンポナーデ(血管肉腫)**を疑う
・ビーグル:触診時に喉に違和感があれば甲状腺がんの可能性
・短頭種(ボクサー、ボストンテリアなど):**心基底部の大動脈体腫瘍(ケモデクトーマ)**が代表的
今回は、フレンチブルドッグにおけるケモデクトーマの症例をまとめてご紹介します。
ケモデクトーマは、大動脈体や頸動脈小体から発生する腫瘍の総称です。
・良性のことも悪性のこともありますが、悪性は比較的まれ
・腫瘍の進行は緩やかで、発見時に明らかな症状がないことが多い
・教科書的には多くの症例で心嚢水貯留が見られるとされますが、当院で経験した症例では心タンポナーデを起こしたものはなし
胸部単純レントゲン検査 大動脈領域で気管を挙上している様にも見える。
超音波検査では心基部に4㎝の腫瘤を確認できる。
当院ではこれまでに6例のフレンチブルドッグにおけるケモデクトーマを経験しています。
そのうち直近の2例は健康診断で腫瘤を偶然発見したもので、いずれも心基底部に腫瘤を認めました。
・いずれの症例も無症状で経過良好
・腫瘍のサイズに個体差はあるものの、発見からの進行は比較的ゆるやか
・心膜内出血や心タンポナーデといった重篤な合併症は現時点では未経験
腫瘍のサイズや位置、動脈との関係によりますが、早期であれば外科的切除も可能な場合があります。
特に大学病院などの高度医療施設であれば、心膜切除などの手術により予後を延ばすことが期待できます。
多くの症例が無症状のまま腫瘍が進行していきます。
そのため、定期的な超音波検査の実施が早期発見のカギとなります。
特に短頭種を飼育されているご家庭では、心臓周辺の定期チェックを積極的に行うことをおすすめします。
・ケモデクトーマは短頭種に多く発生する心臓の腫瘍
・発見時に症状がないことが多く、健康診断での偶発的発見が重要
・重篤な症状を起こす前に診断・治療方針を検討できることが理想
・超音波検査を含む定期健診の重要性がますます高まっています
もし「咳が増えた」「呼吸が荒い」「最近元気がない」といった些細な変化に気づいたら、お気軽にご相談ください。
また、高齢の短頭種を飼っている場合は、年に1回は心臓の超音波検査を受けることをおすすめしています。