肝臓腫瘍切除

症例

ゴールデン・レトリバー 年齢:記載なし(中~高齢想定) メス

主訴

体重減少・食欲低下

来院経緯

紹介病院にて肝臓腫瘤を指摘され、精査・治療目的で当院を受診

検査と手術の判断

各種検査により、腫瘍は肝臓左葉系に局在しており、転移所見は現時点ではなし。
また全身状態も手術に耐えうると判断され、外科的切除を実施することとなりました。

外科手術

開腹すると、腫瘤は大網など周囲組織と著しく癒着
慎重に剥離を進め、腫瘤基部にて切離
腫瘤は最大径20cmという巨大なものでしたが、術後合併症なく回復は良好

※クリックすると画像が確認できます

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術後診断と病理結果

病理組織診断:肝細胞癌(高分化型)

肝細胞癌について

犬の肝臓腫瘍の中で最も多いタイプ
約70〜80%が肝細胞癌であり、比較的悪性度は低い
腫瘍の増大はゆっくりで、6カ月~1年ほど無症状のまま進行することも多い
適切に切除できた場合、術後1,000日(約3年)の生存が期待できるとされています

治療判断のポイント

肝臓腫瘍の手術は、

・腫瘍の位置(特に左葉系か右葉系か)
・転移の有無
・全身麻酔に耐えうる体力の有無 などを慎重に評価した上で行うべきです。

※本症例では、左葉に限局し転移がない、かつ体調も保たれていたことから、外科治療が最も適した選択と判断されました。

まとめ

手術後は食欲も回復し、体重も安定。
術後合併症なく、良好な経過を辿っています。

飼い主の皆様へ

肝臓腫瘍は、「大きいから悪い」「高齢だから手術できない」といった単純な基準では判断できません。

・切除できる場所にあるか
・今の体の状態はどうか
・取ることで生活の質がどれだけ改善するか?

これらを総合的に判断し、可能性があるなら、治療を諦めないことが大切です。
お悩みの際は、ぜひ一度ご相談ください。