2025年11月07日コラム

小型犬を飼っている飼い主様で、犬の歩き方がおかしいと感じたことはありませんか?
小型犬がなりやすい関節疾患のひとつに「先天性肘関節脱臼症」というものがあります。
先天性肘関節脱臼症は生まれつき肘の異常があるため、少しの力でも脱臼を起こしてしまう病気です。
小型犬に起こりやすく、放置すると慢性的な痛みや骨の変形につながり歩行が困難になることもあり注意が必要です。
この記事では、小型犬の先天性肘関節脱臼症の原因、症状、治療、予後を詳しく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、先天性肘関節脱臼症の早期発見ができるように知見を深めていきましょう。
肘関節は、
の3つの骨から構成され、通常は靭帯や筋肉によりしっかりと固定されています。
ところが、生まれつき骨や関節のつくりに異常があると、関節の噛み合わせが悪くなり肘が外れてしまうことがあります。
この状態を「先天性肘関節脱臼症」といい、非常にまれな疾患です。
先天性肘関節脱臼症は主に成長期の小型犬に認められ、早くて生後数週間から生後数ヶ月で症状がでてきます。
関節のどの部分に異常があるかでいくつかのタイプに分かれます。
特にタイプⅡは
など小型犬種での報告が多いタイプです。
先天性肘関節脱臼症は、はっきりとした原因は分かっていません。
以下のようないくつかの原因が合わさって起こるとされています。
タイプによっては小型犬などの特定の犬種に起こることから、遺伝的な要因の影響が大きいとされています。

先天性肘関節症のタイプIIは成長期(とくに生後1年未満)の小型犬にみられることが多く、以下のような症状がおきることがあります。
初期の場合は症状が目立たず、徐々に悪化していくこともあります。
特にタイプⅡでは歩行がうまくできなかったり、痛みが強く出たりする場合が多いです。
小型犬の成長期に上記のような症状が見られた際には、早めに動物病院に相談をしましょう。
タイプIIは若齢の早い時期に症状がでることが多いです。
成長期は骨格が作られる時期です。
そのため治療が遅れると、骨の変形などが起きてしまうこともあり、後からでは治療が困難になります。
生後4ヶ月未満で骨の変形や痛みや歩様異常がほとんどない場合は、徒手による整復が可能なこともあります。
しかし先天性肘関節脱臼症の多くは、外科手術による肘関節脱臼の整復が必要です。
小型犬の場合関節や骨が非常に小さく繊細なため、整形外科を得意とする病院で対応してもらうようにしましょう。
治療の際は以下のような手術を、脱臼の状態や犬の年齢などによって選択していきます。
先天性肘関節脱臼症の手術後は歩行を改善させるために、一定期間の運動制限や、リハビリや定期的な診察も必要です。
手術やリハビリで適切な治療を受ければ、多くの犬が痛みの軽減や歩行の改善を得られます。
しかし下記のような場合は、関節炎の進行による慢性的な痛みが続いたり、歩行を完全に回復させるのが難しい可能性があります。
先天性肘関節脱臼症は早い段階で発見し、適切なタイミングで治療を行うことが重要と言えますね。

小型犬の先天性肘関節脱臼症は、放置すると骨の変形や痛みにより歩行が困難になることもある怖い病気です。
ただし早めの診断と適切な治療を行えば、痛みをおさえ快適な生活を送ることが可能です。
先天性肘関節脱臼症は珍しい疾患であるために、診断が難しい場合もあります。
病気の早期発見のためには、日頃から愛犬の様子をしっかり見ることや定期的な健診が重要です。
当院では整形外科を強みにしており、さまざまな患者さんがご来院されています。
小型犬の成長期に歩き方などで気になることがあれば、早めにご相談ください。
神奈川県藤沢市の動物病院
辻堂犬猫病院