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犬の下顎骨骨折は歯の病気によって起こる?|原因・治療法・予防について詳しく解説

2025年10月28日コラム

犬の下顎骨骨折は歯の病気によって起こる?|原因・治療法・予防について詳しく解説

舌を出して上を見上げる犬


犬も人間と同様に、様々な身体の部位に骨折が起きることがあります。
その中に「下顎骨骨折」というものがあります。
「下顎の骨が折れてしまう」と聞くと、交通事故などをイメージされる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
しかし、犬の下顎骨骨折には歯の病気が関連することがあります。
特に小型犬やシニア犬では歯の病気、主に歯周病が原因で顎の骨が折れてしまうことも少なくありません。

この記事では、犬の歯の病気と下顎骨骨折の関係、原因や治療法、そして予防について詳しく解説いたします。
ぜひ、最後までお読みいただき、犬の歯を守るためにどうしたらいいか知見を深めていきましょう。

歯の病気が骨折につながる原因

犬の歯の病気の中では、特に歯周病が問題になることが多いです。
3歳以上の犬の約80%は歯周病にかかっているとも言われています。
歯周病とは、歯と歯茎の間に細菌が増え、歯肉や歯の周りにある歯槽骨(しそうこつ)に炎症や破壊が起こる病気です。
歯周病は重度になると顎の骨が薄くなり、何か硬いものを噛んだ際やちょっとした衝撃によって、容易に骨折につながります。
歯周病による骨折は、歯と骨の位置の関係で、特に下顎で起きやすいです。
歯周病により下顎を骨折しやすい犬の特徴は以下です。

  • 歯周病が重度な犬
  • 小型犬
  • 老齢犬

特に老齢の小型犬では注意が必要でしょう。

下顎骨骨折の症状

歯周病により犬の下顎が骨折すると、以下のような症状が起きます。

  • ご飯を食べたがらない
  • よだれが増える
  • 口を触ると嫌がる、痛がる
  • 口周辺が腫れている
  • 顎が左右非対称にずれて見える
  • 泣いたり唸ったりする

歯周病による下顎骨骨折の場合、交通事故による急激な骨折と違い、「最近調子が悪そう」など慢性的な症状しかないことも。
そのため、様子を見て骨折に気付くのが遅れることもあります。
しかし、様子を見て下顎骨骨折を放置すると、症状が悪化したり治療が困難になるおそれがあるので注意が必要です。
これらの症状が認められたらすぐに病院にご相談ください。

ソファでおもちゃをかじる犬

犬の下顎骨骨折の治療法

犬の下顎骨骨折の治療法には以下のようなものがあります。
治療法の選択から術後管理まで、適切に行っていくことが重要です。

保存療法

保存療法は軽度の骨折で骨折部位のズレが少なく、周囲組織がしっかりしている場合に適応となります。
エリザベスカラーを着用し安静にして、骨がつくのを待つ必要があります。

固定の実施

保存療法のみでは不十分な場合は、医療用テープでマズルを固定します。
顎の負担がかからないように安静を保ち、骨がつくのを待つ方法です。

骨折の整復

中程度〜重度の骨折の場合は、プレートやワイヤーなどを用いて顎の骨の固定が必要です。
また歯周病の場合は、溶けてしまっている周囲の顎骨を除去する処置が追加されることもあります。

原因歯の抜歯•歯周病治療

歯周病が進行した歯は温存できないため、多くは抜歯が必要です。
同時に歯周病治療として、歯石除去が行われることもあります。

術後の管理

下顎骨骨折の処置を行ったあとは、適切な術後管理も重要です。
主に以下のような管理が必要になります。

  • 抗生剤投与
  • 消炎鎮痛剤投与
  • エリザベスカラー着用
  • 栄養管理

感染予防のために抗生剤の投与、痛みや腫れをひかせるために消炎鎮痛剤の投与が行われます。
また口を触ったり、床に擦り付けたりしないようにエリザベスカラーを着用することも大事です。
食事管理も適切な方法で行わなければなりません。
骨折部位や周りの組織への刺激を少しでも抑えるために、フードを柔らかくしたり流動食を食べさせるなど食事の補助が必要なこともありますね。

下顎骨骨折を起こさないための予防とは

犬の歯周病を防ぐことが、結果的に下顎骨折の予防につながります。
そのため日常的に歯磨きなどのホームケアが重要です。
主な予防法は以下のようなものがあります。

  • 毎日の歯磨き
  • デンタルガムやおやつの使用
  • 動物病院にて定期的な歯科健診
  • 麻酔下でのスケーリング(歯石除去)実施

歯磨きに慣れていない子は歯ブラシを噛んでしまったり嫌がったりしてしまう場合もあります。
まずは口周りを触る練習から始めましょう。
また一度歯石がついてしまったり、歯肉炎になっている歯に無理に歯磨きをすると、歯肉から出血を起こしてしまうこともあります。
一度ついてしまった歯石は歯磨きではとれません。
まずは動物病院に相談し、歯石除去を行い歯周病の治療を行ってもらうようにしましょう。

飼い主に歯を磨いてもらう柴犬

まとめ

犬の歯の病気は、放置すると下顎骨骨折という深刻な状態になってしまう場合もあります。
特に歯周病は重度になってから治療を受けるケースも多いです。
「なんとなく元気がない」「口を触られるのを嫌がる」といったささいな変化も見逃さず、定期的なケアと定期検診を心がけていきましょう。

当院では整形外科に力を入れています。
歯が原因で下顎骨が折れてしまった場合にも、対応いたします。
予防から治療のご相談まで、いつでもご来院ください。

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