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犬が中手骨を疲労骨折?|原因・症状・治療方法を獣医師が解説

2025年10月14日コラム

犬が中手骨を疲労骨折?|原因・症状・治療方法を獣医師が解説

白い犬の肉球

「なんだか最近、前足をかばって歩いてる気がする」
「ジャンプやダッシュのあとから足を浮かせるようになった」
「ぶつけた様子はなかったのに骨折と言われた」
このような違和感があるときは「疲労骨折」が起きているかもしれません。
犬の前足の中手骨(手のひら部分にあたる細長い骨)は、繰り返しの運動や軽微な負荷でも骨折することがあります。

今回は、犬に起こる中手骨の疲労骨折について、原因や治療法など詳しく解説します。
ぜひ最後までご覧いただき、愛犬の足の健康管理にお役立てください。

中手骨の疲労骨折とは?

中手骨は、犬の前肢の手根(手首)から先にある細くて長い骨で、人間でいう手のひらの骨に相当します。
通常の骨折は交通事故や落下などの外力が原因です。
しかし、疲労骨折は一度の衝撃ではなく、日常的な運動による「繰り返しの負荷」で骨にヒビが入ることを指します。

一見すると外傷のような出来事がなくても、蓄積されたストレスにより徐々に骨が弱り、亀裂が入ってしまうということです。

疲労骨折が起こりやすい犬の特徴

疲労骨折は、次のような犬に多く見られます。

  • 運動量が多い犬
  • スポーツや競技に参加している犬
  • 骨格が細い犬種

これらの犬は、日常生活でも中手骨にストレスが集中しやすいため、飼い主さんが注意してあげることが大切です。

それぞれくわしく解説していきましょう。

運動量が多い犬

ラブラドール・レトリーバーやボーダー・コリーなどは、走る・跳ぶといった激しい動きをしやすい犬です。
激しい動きが多いと足先に繰り返し負荷がかかるため注意しましょう。

スポーツや競技に参加している犬

犬のスポーツや競技に、アジリティ競技やディスクドッグなどがあります。
これらは、ジャンプや急停止などの動きで中手骨にストレスが集中しやすくなります。

骨格が細い犬種

イタリアン・グレーハウンドやトイ・プードルなどは、骨格が細い犬種です。
体が軽くても足への衝撃吸収力が弱いため、軽い動きでも骨に負荷がかかりやすくなります。

一度の大きな衝撃ではなくても、日々の積み重ねが骨のダメージとなり、疲労骨折につながるということですね。

外をかけるレトリーバー

疲労骨折の症状は?

疲労骨折は、急激な変化が出にくいのが特徴です。
次のような症状が徐々に現れます。

  • 散歩中や運動後に前足を浮かせる
  • 足を地面につけてもすぐに引っ込める
  • 前肢をかばうような歩き方(跛行)
  • 中手部(手のひら)の腫れ、熱感
  • 抱き上げた時や足を触ったときに痛がる

初期には軽度な違和感程度に見えることもあり、「遊び疲れかな?」と見過ごされがちです。
しかし、そのままにしておくと骨折が進行し、治療に時間がかかることがあります。

疲労骨折の診断

一般的にはレントゲン検査で骨折の有無を確認します。
しかし、疲労骨折は初期の段階ではレントゲンに写らないことも。

そのため、以下のような追加検査が必要になる場合があります。

  • 超音波検査:骨の表面や周囲の腫れを観察
  • CT検査:細かい亀裂や骨の変形を高精度で確認

中手骨の骨折では、複数の中手骨が損傷していることがあります。
骨折の本数や位置を把握するためにも正確な検査が重要です。

中手骨の疲労骨折の治療方法

疲労骨折の治療は、骨のずれや本数、症状の程度によって変わります。

軽度な場合(保存療法)

中手骨骨折では、

  • 第1指
  • 第2指
  • 第5指

の単独骨折の場合は保存療法が適応されることがあります。

保存療法では

  • ギプスや包帯での外固定
  • 4〜6週間のケージレスト
  • 運動や散歩の完全制限
  • 消炎鎮痛薬の投与(必要に応じて)

といった治療が行われることが多いです。

中手骨の変形やズレがない場合は、安静にすることで自然治癒を目指します。

重度または多発の場合(手術)

  • プレートやピン、ワイヤーを用いた整復・固定術
  • 術後のギプス・包帯での追加固定
  • 再骨折を防ぐための長期的な安静管理

複数本の骨折や変位があるときや、体重を支える第3〜4指の骨折の場合は、手術によって確実に固定する必要があります。
手術後は経過を見ながら、包帯交換やレントゲン検査で骨の癒合を確認します。

再発を防ぐためにできること

疲労骨折は、再発のリスクもあるケガです。
治療後は次のような点に注意して予防に努めましょう。

  • 激しい運動を再開する前に段階的に負荷を戻す
  • リハビリや関節ケアを取り入れる
  • 栄養管理や定期的な健康チェックを行う

犬が一度でも疲労骨折を起こした場合は、運動量などに気をつけて過ごすようにしてあげましょう。

ボールをくわえて野原をかける犬

まとめ

中手骨の疲労骨折は、目立った外傷がなくても起こる見えにくい骨のトラブルです。
初期症状は軽いため見逃されがちですが、放置すると痛みや歩行障害に発展することもあります。
「最近足の使い方が変かも?」と思ったら、早めに整形外科が得意な動物病院での診察をおすすめします。

当院では、整形外科に力を入れています。
足の違和感や痛みについてお困りの方は、お気軽にご相談ください。

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