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犬の肩甲骨骨折と肺損傷|見落としやすい外傷の危険性とは

2025年08月14日コラム

犬の肩甲骨骨折と肺損傷|見落としやすい外傷の危険性とは

車道を散歩する2匹の犬

「犬が交通事故に遭ってしまった」
「高いところから落ちたあと、呼吸が荒くて元気がない」
「肩のあたりを痛がるけど、それだけじゃない気がする」
このような状況に不安になったことはありませんか?
交通事故や高所からの落下といった状況で、犬は骨折をすることがあります。
骨折の中でも、大きな外傷の一つが肩甲骨の骨折です。
肩甲骨の骨折があった場合には、合わせて「肺損傷」が起こっている可能性があります。

犬の肩甲骨骨折は全体の骨折の中では発生頻度が低いものです。
しかし、重度の外力が加わることで起こるため、他の重大なケガを伴うことが多いのが特徴です。
特に肺の損傷は、見た目ではわかりにくく、命に関わることもあるため注意が必要です。

今回は、犬の肩甲骨骨折と肺損傷について、症状や診断、治療のポイントをわかりやすく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、いざというときに犬の骨折に対して適切な対応ができるように備えておきましょう。

肩甲骨骨折はどんなときに起きるのか

犬の肩甲骨は、胸の外側にある平たい骨で、多くの筋肉に囲まれています。
このため、ちょっとした衝撃では骨折しにくい構造になっていますが、強い外力が加わったときには骨折を起こすことがあります。

よくある原因には以下のようなものがあります。

  • 車との接触(交通事故)
  • 階段やベランダからの落下
  • ドアに挟まれる
  • 大型犬との衝突や引っ張られる事故

こうしたケースでは、肩甲骨だけでなく胸部全体に衝撃が加わっているため、肺にも損傷が起きていることがあります。

ドッグランでジャンプするダルメシアン

肺損傷とは?

肺損傷とは、胸部への衝撃により肺の組織が損傷してしまう状態を指します。
中でも代表的なのが「肺挫傷(はいざしょう)」という状態で、肺の中に出血や浮腫が起き、呼吸機能に障害が出ることがあります。

肺は外からは見えない臓器のため、見た目には異常がなくても、内側で大きなダメージを受けている可能性がある点が非常に危険です。

肩甲骨骨折と肺損傷の合併は意外と多く、文献によっては50%以上のケースで肺や肋骨へのダメージが同時に発生していると報告されています。

肺損傷が疑われるときの症状

肩甲骨の骨折と肺損傷が同時に起きていると、次のような症状が見られることがあります。

  • 呼吸が浅くて速い(頻呼吸)
  • 口を開けて呼吸する(開口呼吸)
  • 舌や歯茎の色が紫っぽい(チアノーゼ)
  • 動こうとしない、ぐったりしている
  • 咳が出る、吐くようなしぐさをする

肩のあたりを痛がっているから骨折かな?と思っていても、実は命に関わる肺のトラブルが起きていることもあります。
事故や落下のあとにこうした症状が見られたら、すぐに動物病院で診察を受けましょう。

障害物を上るビーグル

診断のために行う検査

肩甲骨骨折と肺損傷の診断には、以下のような検査が行われます。

  • 身体検査(呼吸の状態や胸の動きの確認)
  • レントゲン検査(骨の状態、肺の白さや気胸の有無など)
  • エコー検査(胸腔内の出血・液体貯留の確認)
  • 必要に応じてCT検査や血液検査

肩甲骨の骨折はレントゲンで比較的わかりやすいことが多いですが、肺損傷は程度によって見えにくい場合もあります。
呼吸状態が悪い場合は、慎重に検査を進める必要があります。

治療のポイント

肩甲骨の骨折に関しては、骨折の位置やズレの大きさによって保存療法または手術が選択されます。
一方、肺損傷の治療は、以下のように症状の程度に応じて対処します。

  • 酸素吸入による呼吸サポート
  • 鎮痛薬の投与
  • 肺出血がひどい場合は止血・輸血対応
  • 気胸がある場合は胸腔穿刺やドレーン設置

肺損傷は、骨折よりも緊急性が高く、命に関わるため、まずは呼吸状態を安定させることが最優先となります。
安定した後に、肩甲骨の治療が進められることが多いです。

まとめ

肩甲骨骨折は単独で起きることは少なく、多くのケースで肺損傷や肋骨骨折など、胸部のトラブルを伴っています。
外から見える骨折だけに気を取られてしまうと、見えない肺の損傷を見落としてしまうこともあります。

事故や転落のあと、肩を痛がる、息が荒い、ぐったりしている、そんなときは、すぐに動物病院で詳しい検査を受けることが重要です。
当院には整形外科治療を専門とする獣医師が在籍しています。
骨折は整形外科を専門とする獣医師による診察と治療がとても大切です。
肩甲骨骨折が疑われる場合には、ぜひ当院へご相談ください。

 

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