下顎骨骨折は、犬や猫における頭部の外傷により発生する損傷で、歯のずれや咬み合わせの異常、血液混じりの唾液などが特徴です。骨折は片側性または両側性で、単一または複数の骨折線を含む場合もあります。外傷性以外では、歯周病や腫瘍に起因する病的骨折もみられます。骨折部位は犬では前臼歯領域、猫では下顎結合部が一般的です。
主な原因は交通事故や高所からの落下などの外傷です。さらに、歯周病や抜歯時の不適切な操作、腫瘍などにより病的骨折が引き起こされることもあります。外傷性骨折では咬合不全や口腔内の裂傷を伴うことが一般的です。
踵骨骨折の主な原因は、交通事故、高所からの落下、過度の運動などの外傷です。また、競技犬では反復的なストレスが蓄積して疲労骨折を引き起こすことがあります。
小型犬やトイ種、歯周病を持つ老齢動物は特にリスクが高いです。
また、若齢犬猫は成長板が未成熟なため骨折の可能性が高くなります。これらの特徴は、環境要因や飼育条件にも影響を受けます。
症状としては、口腔の痛みや腫れ、食欲不振、血液混じりの唾液、咬み合わせの不良などが挙げられます。触診で不安定性や捻髪音が確認される場合もあります。また、歯のぐらつきや損傷が伴うことが多いです。
治療は骨折の重症度や部位に応じて異なります。
骨折の背景に重度の歯周病が存在する場合には、口腔内の環境を清浄化すること(抜歯、スケーリング)が最優先となります。老齢動物では歯科処置を行ったのちにテープ製の口輪で保存療法を選択することが多いですが、若い動物では噛み合わせがよくなるように内固定(プレート、ワイヤー、スクリュー)を行うことが推奨されます。歯間固定技術も有効な方法のひとつです。
外傷性に下顎骨折が生じた場合には、噛み合わせの回復を最優先に内固定を行うことが推奨されます。
骨折部の変位が少なく、咬合に大きな問題が生じていない場合は、テープ製の口輪で固定する保存療法が選択されることがあります。
手術が必要かどうかは、骨折の安定性と位置に依存します。
不安定な骨折や咬合に影響を及ぼす骨折では手術が推奨されます。ただし、安定した骨折の場合は保存療法で治癒することもあります。迅速な診断と治療が重要です。
手術後は通常4~6週間の安静が推奨されます。食事は柔らかいものに制限され、硬いものや噛むおもちゃは避けるべきです。定期的なレントゲン検査で骨折の治癒状況を確認し、必要に応じてインプラントを除去します。術後の経過観察が重要です。