下顎骨骨折

下顎骨骨折とは?

下顎骨骨折とは、犬や猫のあごの骨(下顎骨)が折れてしまう状態を指します。

下顎骨骨折の主な原因は、頭部への強い衝撃です。

片側または両側に起こり、骨折線が複数あるケースもあります。

また、外傷以外にも重度の歯周病や腫瘍により、骨がもろくなって発症する「病的骨折」も存在します。

犬では前臼歯のあたり、猫では下顎の中央(下顎結合部)に骨折が起きやすい傾向がある骨折です。

下顎骨骨折を起こすと、歯のずれや咬み合わせの異常、血液混じりの唾液などの症状が見られます。

下顎骨骨折の原因は?

下顎骨骨折の主な原因は交通事故や高所からの落下などの外傷です。

また、歯周病や抜歯時の不適切な操作、腫瘍などにより病的骨折が引き起こされることもあります。

外傷性の下顎骨骨折では咬合不全や口腔内の裂傷を伴うことが一般的です​​。

下顎骨を骨折しやすい犬種や年齢は?

以下のような犬猫では、下顎骨骨折のリスクが高まります。

  • ・小型犬やトイ種
  • ・歯周病を持つ老齢動物
  • ・骨が柔らかい若齢動物

また、生活環境や飼育状況(高所から飛び降りることが多い、硬いおもちゃをかじるなど)もリスクを高める要因となります​。

下顎骨を骨折するとどんな症状がでるの?

下顎骨骨折に見られる主な症状としては、

  • ・口腔の痛みや腫れ
  • ・食欲不振
  • ・血液混じりの唾液
  • ・咬み合わせの不良
  • ・歯のぐらつきや欠損

などが挙げられます。

また、診察時に骨折部のずれや、骨同士がこすれてコリコリという捻髪音(ねんぱつおん)が確認される場合もあります。

下顎骨骨折の治療方法は?

下顎骨骨折の治療方法は骨折の重症度や部位、年齢などに応じて異なります。

骨折の背景に重度の歯周病が存在する場合には、口腔内の環境を清浄化すること(抜歯、スケーリング)が最優先となります。

老齢動物では歯科処置を行ったのちにテープ製の口輪での保存療法を選択することが多いです。

一方、若い動物では噛み合わせがよくなるように内固定(プレート、ワイヤー、スクリューなど)や歯間固定技術を行うことが推奨されます。

外傷性に下顎骨折が生じた場合には、噛み合わせの回復を最優先に内固定を行うことがおすすめです。

骨折部の変位が少なく、噛み合わせに大きな問題が生じていない場合は、テープ製の口輪で固定する保存療法で治療を行うこともあります。

骨折における固定法の図解イラスト

下顎骨骨折と診断されたら手術した方がいいの?

下顎骨骨折では、手術が必要かどうかは、骨折の安定性と位置によって判断されます。

骨折部が不安定な場合や噛み合わせに影響を及ぼす骨折では手術が推奨されます。

一方で、安定した骨折の場合は保存療法で回復する場合も。

いずれにせよ、早期の診断と処置が治療の成功に大きく関わります​​。

下顎骨骨折の手術のあとの管理はどのくらい必要なの?

下顎骨骨折の手術後は通常4~6週間の安静が推奨されます。

食事は柔らかいものを中心にし、硬いものや噛むおもちゃは避けるようにしましょう。

安静後は定期的なレントゲン検査で骨折の治癒状況を確認し、必要に応じてプレートなどを除去します。

骨折が完治するまでの間、痛みの管理や食事内容の調整を丁寧に行うことが大切です。

症例紹介

Case01 ボストン・テリア 4ヵ月齢 3.9kg 左側上腕骨顆間骨折+外側上顆粉砕骨折

左側上腕骨顆間骨折+外側上顆粉砕骨折 レントゲン画像

術中所見

*手術中の写真が含まれています。閲覧される場合にはご注意ください。

左側上腕骨顆間骨折+外側上顆粉砕骨折 術中所見01
左側上腕骨顆間骨折+外側上顆粉砕骨折 術中所見02
左側上腕骨顆間骨折+外側上顆粉砕骨折 術中所見03
左側上腕骨顆間骨折+外側上顆粉砕骨折 レントゲン画像