脛骨骨折は、犬の後ろ足にある「すね」の骨(脛骨)が折れる状態を指します。
この骨折は犬の骨折全体の中でも一般的で、全長骨骨折の約20%を占めます。多くの場合、交通事故や高所からの落下、激しい衝突など、強い外力が原因となります。また、脛骨は他の骨と比べて筋肉による保護が少ないため、骨折した際に骨が皮膚を突き破って露出する「開放骨折」が生じやすい傾向があります。
診断は、触診やレントゲン検査をもとに行い、骨折の位置や骨折のタイプを詳しく評価し、それにもとづいて適切な治療法を選択する必要があります。
脛骨の成長板骨折は、成長期の犬の骨の両端にある成長板(骨端板)が骨折することを指します。成長板は骨の長さを伸ばす役割を果たし、骨の成長が終わる時期(約1歳)まで重要な部分です。この部分が骨折すると、正常な骨の成長が妨げられて骨が変形したり、左右の骨の長さに違いが生じる可能性があるため、適格な診断と早期の治療が非常に重要です。
おもな原因は、交通事故や高所からの落下、他の動物との衝突などの外傷です。また、骨腫瘍や栄養不足など、骨の健全性を損なう病気も骨折の要因になります。骨折は通常、強い力が脛骨に加わることで発生しますが、特に小型犬や若齢犬では、骨の発達途中で骨自体の強度が弱いため、比較的軽い衝撃でも骨折することがあります。
脛骨骨折は特に若齢犬や小型犬に多く発生します。若齢犬では骨が成長中で柔軟性が少なく、小型犬では体重の分布や骨の構造が要因となります。また、活発で運動量の多い犬種、例えばジャック・ラッセル・テリアやボーダー・コリーのような犬種は、高所からの飛び降りや激しく走り回ることが原因で骨折のリスクが高まります。一方、高齢犬でも骨密度が低下して筋肉の衰えが影響し、骨折しやすくなることがあります。
脛骨を骨折した犬では、患肢を使えなくなり、片足を浮かせたまま歩こうとする行動がみられることが多いです。また、骨折した部位が腫れたり、激しい痛みのため触れられるのを嫌がります。開放骨折が生じた場合には出血がみられることもあります。成長期の犬では、成長板骨折が生じても短期間で患肢を使用するようになることがありますが、成長板骨折は診断が遅れると治療の選択肢が狭まってしまうため、まずは適切な診断をつけることがとても大切です。
脛骨骨折の治療の目的は、「痛みの除去」と「機能回復」です。
若齢で骨片の変位がほとんどない場合には、ギプスや包帯による「保存療法」が選択されますが、多くの場合は手術が必要です。手術方法には、ピンやプレート、創外固定を使用して骨を正しい位置に整復して安定化させる方法があります。
骨折部を適切に安定化し、早期の治癒を促すために多くの場合では手術が推奨されます。
手術をしない場合、骨が正しい位置に癒合せず、将来的に歩行障害や慢性的な痛みを引き起こすリスクがあります。特に、骨が粉々に折れていたり、骨折部が大きくずれている場合、または開放骨折の場合は、手術が不可欠です。
骨が完全に癒合するまでの期間は、健康状態や年齢によりますが6~8週間程度が一般的です。この間、運動は引き綱を使った制限的な散歩に限られ、室内でも過度な動きがないよう注意が必要です。また、術後の経過によってはリハビリテーションが患肢の機能回復と筋力維持に重要な役割を果たします。