中手骨および中足骨骨折

中手骨・中足骨骨折とは?

中手骨・中足骨は、犬や猫の手足の真ん中にある、細くて長い骨です。

中手骨や中足骨の骨折は、高いところから落下したり、交通事故にあったり、他の動物とぶつかったりすることで起こります。

中手骨・中足骨骨折にはいくつかのタイプがあります。

骨がまっすぐ割れる「単純骨折」、粉々になる「粉砕骨折」、靭帯に引っ張られて骨の一部がはがれる「裂離骨折」などが代表的です。

中手骨を表す骨格イラスト

中手骨・中足骨骨折の原因は?

中手骨・中足骨骨折のよくある原因には次のようなものがあります。
  • ・交通事故
  • ・高所からの落下
  • ・激しい運動やジャンプ
  • ・ドッグランなどでの他の動物との接触
特に外での活動が多い犬や、猫の高所からの飛び降りには注意が必要です。

中手骨・中足骨を骨折しやすい犬種や年齢は?

中手骨・中足骨骨折は、成長期の若い犬や猫、小型犬、高齢犬で特に起こりやすい傾向があります。

若齢の子では骨がまだ成長途中でやわらかく、衝撃に弱いためです。

また、運動量の多い犬種やスポーツに参加している犬では、疲労骨折を起こすケースもあります。

中手骨・中足骨を骨折するとどんな症状がでるの?

中手骨・中足骨を骨折すると、以下のような症状が現れます。

  • ・足をかばって歩く(跛行)
  • ・足をつけない
  • ・足先の腫れや痛み
  • ・足が変な角度に曲がる
  • ・触ると痛がる

これらの症状がみられたら、できるだけ早く動物病院へ連れて行きましょう。

中手骨・中足骨骨折の治療方法は?

治療方法は骨折の状態や重症度によって異なります。

治療の目的は、「痛みの除去」と「機能回復」です。

骨折の状態によって、保存療法または外科療法を選択します。

保存療法

骨があまりずれていない場合は、ギプスや包帯でしっかり固定して自然に骨がつながるのを待ちます。

外科療法

骨が大きくずれている場合や複数折れている場合は、金属のプレートやネジ、ピンなどで骨を固定する手術が必要になります。

たとえば「髄内ピン法」が外科療法の一つです。

髄内ピン法では、ピンを入れる髄腔と呼ばれる骨の内部に細いピンを入れる処置を行います。

ピンはあくまでも骨折した部位を合わせておくことが目的なので、ギブスなどで外から固定して骨を安定させます。

ピンを使用した場合には、骨がしっかりついたらピンを取り除く処置が必要です。

他にも骨をプレートで固定させる「プレート固定法」などの外科療法が存在します。

 
中手骨骨折における髄内ピン法とプレート固定法のイラスト

中手骨・中足骨骨折と診断されたら手術した方がいいの?

中手骨・中足骨骨折の場合は、必ずしもすべての骨折で手術が必要とは限りません。

ただし、体重がかかりやすい中指(第3)やくすり指(第4)の骨が折れていたり、3本以上の骨が折れている場合、または骨のずれが大きい場合は、手術がおすすめです。

中手骨・中足骨骨折の手術のあとの管理はどのくらい必要なの?

術後は骨が完全につくまで6~8週間の安静が必要です。

ケージでの安静や短時間のお散歩にとどめ、飛び跳ねたり階段を上り下りさせないようにしましょう。

骨がついた後は、徐々に歩く距離を伸ばしたり、関節を動かす練習をしていきます。

中手骨・中足骨骨折は、骨が細く繊細な部分の骨折なので、整形外科を専門とする獣医師による診察と治療がとても大切です。 早期の診断と適切な治療を行うことで、動物の生活の質を守りましょう。

症例紹介

Case01 雑種 5歳 3.7kg 不妊雌 右側第2および第3中手骨骨折

 
中手骨骨折のレントゲン写真 中手骨骨折で髄内ピンを入れたレントゲン写真 中手骨骨折の術後から術後8週までの比較レントゲン写真

Case02 ポメラニアン 4ヵ月齢 4.6kg 雄 右側第2–5中足骨骨折

 
中足骨骨折のレントゲン写真
中足骨骨折の髄内ピンレントゲン写真