ビルトート

症例

ミニチュア・ダックスフント 8歳 オス

主訴

食欲不振、頻回の嘔吐
来院時、食事を受け付けず、嘔吐が続いているとのことで受診されました。

超音波検査

胃の出口(幽門部)に腫瘤を確認。胃の内容物が滞留しており、消化物の通過障害が起きている可能性が高いと判断しました。

CT検査

腫瘍は胃から幽門部にかけて存在していましたが、転移は認められず、外科的切除が可能と判断されました。

消化管腫瘍について

犬の消化管に発生する腫瘍には以下のようなものがあります

・腺癌、リンパ腫などの悪性腫瘍
・GIST(消化管間質腫瘍)
・平滑筋腫/平滑筋肉腫

GISTや平滑筋腫など一部の腫瘍では、腫瘍のみを“くり抜く”ように切除(核出術)する低侵襲な手術が可能です。
しかし、腺癌などの悪性腫瘍では、広範囲な切除と再建が必要となります。

術中所見

・腫瘍は幽門部から十二指腸にかけて広がっており、核出術の適応外
・**胃・十二指腸の一部を切除し、再建(ビルロートⅠ法)**を実施

手術手順の概要

・腫瘍周囲の癒着を丁寧に剥離し、腫瘤を摘出
・胃と十二指腸の端を縫合し、消化管の再建を完了

癒着等剥離し腫瘤をけん引
※クリックすると画像が確認できます

腫瘤切除後
※クリックすると画像が確認できます

胃と十二指腸縫合終了
※クリックすると画像が確認できます

術後管理と経過

翌日から給餌を開始し、嘔吐などの消化器症状は見られず順調に回復
膵炎などの合併症にも注意を払いながら慎重に管理

現在の状態

非上皮系の悪性腫瘍であり、完全切除が確認されたものの、今後も経過観察が必要とされています

まとめ

・幽門部の腫瘍は、食欲不振・嘔吐の原因となることがある
・CT検査により転移の有無や手術の適応可否を正確に判断
・消化管の再建を伴う高度な外科治療が必要なケースもあるが、適切に対応すれば良好な回復が期待できる

飼い主の皆様へ

「最近食欲がない」「嘔吐が続いている」といった症状は、消化管の重篤な疾患が隠れている場合もあります。
早期の検査・診断によって、適切な治療につなげることができますので、気になる症状があればお早めにご相談ください。