平滑筋腫は未避妊の子宮、膣によく発生します。胃や消化管にも発生します。剥離した時の出血がコントロールできれば切除可能です。
症例はラブラドール12歳 未避妊
最近、排便困難と排尿時の尿漏れを主訴に来院しました。触診上、膣部に可動性の固い腫瘤が触れ組織検査にて平滑筋腫と診断しました。
写真1
膣の内診で膣粘膜下の頭側部から発生している事が確認できました。
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写真2
会陰部直上から切開し粘膜層まで切開します。膣内に鉗子を挿入しておくと切開しやすい場合もあります。
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写真3
粘膜まで切開を進めますと、膣の内腔が確認できます。膣平滑筋から発生していますので表面上はきれいな粘膜が覆っています。
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写真4
膣の手術の場合、必ず尿カテーテルを留置します。シコリを取るのに夢中になると思わぬアクシデントに見舞われます。
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写真5
ここからが本番です。粘膜層に切開を入れシコリをツルツルと剥いていきます。栄養血管が何本か入り込みますので随時対処します。
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写真6
腫瘤が膣外まで牽引できれば切除が可能になります。一気に取ってしまっても良いですが、ここは我慢してじっくり止血をしながら安全に切除します。
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写真7
切除完了ですが、粘膜ですのでそこそこ出血があります。大きな血管は結紮しますがにじむ様な出血は縫合して止血します。腫瘤のあった頭側の粘膜、背側の皮膚側の粘膜そして皮膚と順を追って縫合閉鎖します。
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写真8
皮膚側粘膜の閉鎖が完了。膣からの出血や血腫が心配な場合は一時的にタンポンを挿入しておくと良いでしょう。
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宮平滑筋腫の場合は比較的深い位置に腫瘤が存在する事があるので少し厄介です。
症例はラブラドール10歳
未避妊 排便時のいきみと便の扁平化を主訴に来院しました。
腫瘤は骨盤腔の入り口に存在していました。
写真9
膀胱の尾側に白色の腫瘤が確認できます。
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写真10
この部位でのもっとも注意が必要な臓器は尿管です。確実に確認し避けなければなりません。
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写真11
腫瘤がある程度露出できれば、出血に注意しながら切除します。
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写真12
何本かの栄養血管がありますので止血は確実に行います。切除が完了すると何事も無かったかのようにスッキリします。
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写真13
どの平滑筋腫も写真の様な綺麗な白色の外観です。
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この症例は吐血と急激な貧血を主訴で来院しました。超音波検査で幽門部から発生した孤立性腫瘤を確認し、急激な出血のコントロールのために緊急手術を実施しました。
写真14
胃の平滑筋腫も同様です。しかし、術前診断で組織検査が難しいのが現状です。術中所見でツルツルいければそのまま切除し、上手く剥がれなければ胃の全層切除が必要になります。
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写真15
この症例は一部潰瘍化し、吐血をしていました。こんな小さな病変に命を脅かされるのは驚きです。
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平滑筋腫の切除は多少出血するイメージは持っていますが、命を脅かすほどの出血はしません。平滑筋腫は胃や消化管にも発生しますが、どの部位に出来ても気持ちよく切除が可能です。但し、悪性度の高い平滑筋肉腫の場合、このような切除が可能とは思えません。逆に考えればツルツル取れれば平滑筋腫の可能性が高いと言う事になります。特に胃の腫瘤の場合、胃の拡大切除をするか否かに関わってきます。写真15の様な症例にビルロートなどの拡大切除をする必要は全くないわけです。
平滑筋腫かどうかの診たてさえ誤らなければ切除は容易です。