アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹が繰り返し現れる慢性の皮膚疾患です。遺伝的素因があり、好発犬種も報告されています。主に若齢期に発症しますが、年齢を重ねてから発症する場合もあります。アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能が低下し、外部からの刺激やアレルゲンに対して過敏に反応することが原因です。これにより、皮膚が乾燥しやすく、かゆみや炎症が生じます。
アトピー性皮膚炎の原因は複数あります。遺伝的要因、環境要因、免疫系の異常などが複合的に関与しています。環境要因としては、ダニやホコリ、花粉などが挙げられます。また、温暖多湿な季節に悪化するといわれています。
アトピー性皮膚炎の主な症状は、かゆみです。顔、耳、四肢端、腹部などに現れやすく、初期は赤みや腫れがみられます。強いかゆみのため、引っかいたり、舐めたりすることで皮膚がジュクジュクしたり、かさぶたができることもあります。慢性期には、皮膚が厚くなり、ゴワゴワした状態(苔癬化)になることがあります。
アトピー性皮膚炎の診断は、主に臨床症状の観察と問診によって行われます。皮膚の状態や湿疹の分布、かゆみの程度などを確認し、診断を行います。また、アレルギー検査や血液検査を行うことで、アレルゲンの特定や炎症の程度を把握することができます。特に、アレルギー検査では、ダニや花粉、食物などのアレルゲンに対する反応を調べることが重要です。
アトピー性皮膚炎の治療は、症状の軽減と再発防止を目的としています。アレルギー反応の原因によって治療法は様々ですが、減感作療法、痒み止めの内服薬や注射薬、外用薬などがあります。
アレルゲンの除去や生活環境の改善も重要です。さらに近年はスキンケアも重要視されています。皮膚に優しい低刺激なシャンプーを定期的に行い、皮膚表面に付着した炎症産物や抗原を洗い流します。また皮膚に刺激をあたえず、乾燥しないようにシャンプー後は保湿剤を用いることで皮膚の乾燥を防ぎ、バリア機能を改善します。
アトピー性皮膚炎は、完治が難しい病気ですが、適切な治療とケアで症状をコントロールすることが可能です。飼い主としては、愛犬の皮膚の状態を日々観察し、異常があれば早めに獣医師に相談することが重要です。また、定期的なスキンケアや生活環境の整備を行い、再発を防ぐ努力を続けましょう。愛犬の健康を守るために、飼い主の協力が欠かせません。