足根関節の疾患

足根関節の離断性骨軟骨症とは?

足根関節の離断性骨軟骨症(OCD:Osteochondritis Dissecans)とは、足根関節の軟骨の一部が正常に骨化せず、関節内に遊離した骨軟骨片(関節ねずみ)を形成する病気です。特に、足根関節のうち、距骨の内側滑車稜という部分で多く発生します。この骨軟骨片が関節内で刺激を起こすことで、痛みや跛行を引き起こします。
骨の成長が盛んな若齢期に発症しやすく、運動後の違和感や足を引きずるような症状が目立ってきます。初期は症状が軽微なこともありますが、進行すると関節炎を引き起こし、慢性的な痛みや機能障害につながるため、早期の診断と適切な治療が大切です。

足根関節の離断性骨軟骨症の原因は?

この疾患の主な原因は、発育期の軟骨が正常に骨へと変化(骨化)しないことにあります。この骨化異常は、骨端軟骨の壊死(壊死性骨軟骨形成障害)が関与しており、軟骨と骨の間に亀裂が入り、骨軟骨片として剥離します。
遺伝的要因や急速な成長、栄養バランスの偏り(カルシウム・リンの比率異常など)、激しい運動などが関係していると考えられています。また、大型犬種や特定の犬種では発症リスクが高いことから、遺伝的素因が強く関与している可能性があります。

足根関節の離断性骨軟骨症を発症しやすい犬種や年齢は?

この病気は、大型犬種や使役犬に多く見られます。特にラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバー、ロットワイラー、ジャーマン・シェパード、ブルドッグ、ブル・マスティフなどで報告が多くあります。
発症年齢は、通常5〜8ヵ月齢の成長期が多く、骨の発育が盛んな時期と一致します。雄に多い傾向もあり、体重増加が急な個体や高栄養状態にある子犬ではリスクが高まることが知られています。

足根関節の離断性骨軟骨症ってどんな症状がでるの?

主な症状は、後ろ足の跛行(足をかばうような歩き方)や、運動後に悪化する足の痛みです。じっとしている時は症状が出にくいこともありますが、運動を始めると足を着きにくくなる様子がみられます。重度の場合には関節が腫れ、関節を触られるのを嫌がる様子もみられます。また、両足同時に罹患することもあり、全体的に動きが鈍くなったり、ジャンプや階段の昇り降りを嫌がるようになったりします。慢性化すると、関節炎による慢性的な痛みが続き、生活の質が低下します。

足根関節の離断性骨軟骨症ってどうやって診断するの?

この病気の診断には、身体検査と画像診断を組み合わせることが重要です。まずは歩様のチェックや関節の触診を行い、痛みや可動域の異常を確認します。その後、レントゲン検査やCT検査を行うことで、骨軟骨片の有無や関節面の状態を詳しく調べます。

触診

足根関節の可動域や痛みの有無を確認します。特に足根関節の内側に圧痛がある場合、距骨のOCDが疑われます。関節の動きに制限があったり(関節可動域制限)、対側と比較して関節の異常な緩さや角度の変化がみられることがあります。

画像検査・レントゲン検査

OCDによる骨軟骨片は、標準的な側面や正面のX線写真で確認できることがあります。ただし、骨片が小さい場合や重なりによって見えづらいこともあり、撮影角度やストレス撮影が診断精度を高めます。

CT検査(コンピュータ断層撮影)

CTは複雑な足根関節の構造を三次元的に把握できるため、骨軟骨片や病変部位の同定にとても有効です。特に手術前の詳細な評価や、レントゲンで不明瞭な病変の確認に有用です。

関節鏡検査

関節鏡検査は、足根関節の離断性骨軟骨症の確定診断に有効です。CT画像ではわかりにくい小さな骨軟骨片や軟骨下骨の変性を直接視認することが可能で、診断と同時に治療を兼ねることができます。

足根関節の離断性骨軟骨症の治療方法は?

治療には保存療法と外科療法の2つがあります。
軽度の場合や成長途中の犬では、安静や運動制限、消炎鎮痛剤による対症療法で改善がみられることもありますが、多くの場合では外科療法が必要です。
手術では、関節鏡や開放手術で遊離した骨軟骨片を除去し、滑らかな関節面を再形成します。必要に応じて骨欠損部にドリリングを行い、修復を促進します。

足根関節の離断性骨軟骨症と診断されたら手術した方がいいの?

多くの場合、外科療法が推奨されます。
特に骨軟骨片が関節内に存在し、痛みや跛行がある場合は手術によって症状の改善が期待できます。保存療法で改善しない場合や、すでに関節炎が進行しているケースでは、手術がより良い予後につながります。早期の外科的介入により関節の機能をできるだけ保ち、痛みの少ない生活を取り戻すことができます。
ただし、足根関節の離断性骨軟骨症は肩関節や肘関節に生じる離断性骨軟骨症に比べて、術後に後遺症が残りやすいという報告があり、注意が必要です。

足根関節の離断性骨軟骨症の手術のあとの管理はどのくらい必要なの?

手術後は、約4〜6週間の安静が必要です。この期間は必要に応じて包帯や副木、ケージレストを行い、消炎鎮痛剤の投与が行われます。回復期には、徐々に運動量を増やしながら、関節の可動域を維持するためのリハビリテーションを行うこともあります。
定期的な診察やレントゲン検査により、関節の状態を確認しつつ、段階的に通常の生活へと戻していきます。術後管理を適切に行うことで、再発や関節炎の進行を抑制することができます。

足根関節の脱臼・亜脱臼ってなに?

足根関節(そっこんかんせつ)は、後ろ足の「かかと」にあたる部分で、脛骨・腓骨・距骨・踵骨・足根骨・中足骨といった複数の骨と靭帯が組み合わさってできた関節です。この関節が強い衝撃や慢性的なストレスによってずれてしまうことがあり、完全に外れてしまうことを「脱臼」、一部がずれて不安定な状態になることを「亜脱臼」と呼びます。どちらも関節の安定性が失われるため、歩行に支障をきたし、痛みを伴うことがあります。犬や猫の後肢のトラブルの中でも、足根関節の障害は見逃されやすく、早期発見と治療が大切です。

足根関節の脱臼・亜脱臼の原因は?

最も一般的な原因は、交通事故や高所からの落下などによる外傷です。特に車にひかれた場合は、関節だけでなく周囲の靭帯や骨にも大きなダメージを受けることがあります。また、繰り返しの運動や加齢による靭帯の脆弱化、肥満による関節への負荷なども脱臼や亜脱臼を引き起こす要因です。なかには靭帯の構造的な異常や、特定の犬種に多い遺伝的要因が関係することもあります。原因によって治療方法が変わる可能性があるため、正確な診断が重要です。

足根関節の脱臼・亜脱臼が起こりやすい年齢や犬種は?

どの年齢・犬種でも起こり得ますが、傾向としては中高齢のシェットランド・シープドッグやコリー系の犬種に多くみられます。これらの犬種では、加齢や体重増加による靭帯の変性により、明確な外傷がなくても脱臼や亜脱臼が生じることがあります。一方で、若齢犬では激しいジャンプや運動中の外傷による脱臼が目立ちます。また、肥満傾向にある犬や活動性の高い大型犬もリスクが高いとされています。両後肢に発生することもあるため注意が必要です。

足根関節が脱臼するとどんな症状がでるの?

突然足をつかなくなる、片足を浮かせて歩く、歩き方がおかしいなどの跛行がよくみられます。また、関節の部分が腫れていたり、触ると痛がったりする様子がみられることもあります。関節が大きくずれている場合は、足の角度が明らかに不自然になることがあります。関節のぐらつきや安定性の欠如があると、足の力が入らずに地面にベタッと足をつける「蹠行性跛行」になることもあります。痛みが少ないケースでも要注意です。

足根関節の脱臼・亜脱臼はどうやって診断するの?

触診

足根関節の脱臼が生じている場合には、足根関節周囲を触られるのを嫌がったり、関節が腫れてうまく動かなくなったりします。靱帯損傷によって関節に不安定が生じた場合には、触診で骨どうしの位置関係に動揺がみとめられるようになります。

レントゲン検査

骨の位置や関節のずれの有無を確認します。靱帯はレントゲン画像にはうつらないので、通常のレントゲン撮影では骨どうしの位置関係に変化が生じにくく診断がつきにくいことがあります。その場合には、「ストレス撮影」と呼ばれる関節に軽く圧をかけた状態でレントゲン撮影を行い、骨どうしの位置関係に変化が生じるかを確認します。

足根関節の脱臼・亜脱臼の治療方法は?

軽度の亜脱臼や靭帯の損傷が軽い場合は、副木(スプリント)や包帯などで関節を固定し、安静にする保存療法を選択できることがあります。ただし、関節の動揺が大きい場合や、靭帯が完全に断裂している場合には、外科療法が必要になります。
外科療法では、靭帯の修復や代替の補強材(人工靭帯)を使った関節の安定化、あるいは関節自体を固定して動かなくする「関節固定術」が行われることもあります。病状や犬の活動レベルに応じて、最適な治療法を選びます。

足根関節の脱臼・亜脱臼と診断されたら手術した方がいいの?

状態によりますが、靭帯の断裂や関節の大きな不安定性がある場合は、自然に治癒することは難しく手術が勧められます。放置すると慢性的な痛みや関節炎を引き起こし、将来的に歩行困難となるリスクもあります。手術によって関節を安定させることで、痛みの軽減や足の機能回復が見込め、生活の質の向上につながります。特に若くて活発な犬や、大型犬、両足に影響がある場合などでは、積極的な外科療法が推奨されます。

足根関節の脱臼・亜脱臼の手術のあとの管理はどのくらい必要なの?

術後は関節の安定性を保ちながら回復を助けるために、最低でも4〜6週間の固定と安静が必要です。包帯や副木(スプリント)、または創外固定器(皮膚の外から金属のピンや器具で骨や関節をしっかり固定する方法)で関節を守ります。その間は運動を制限し、定期的な通院で傷の治り具合や関節の状態を確認します。さらに、リハビリテーションや徐々に運動量を戻すための計画も重要です。管理を怠ると合併症が発生するリスクが高まるため、術後のケアは非常に大切です。