循環器科の実際の治療例

循環器科の実際の治療例

初回ワクチン接種時(4ヶ月齢)の身体検査にて心雑音を聴取し、循環器科にて精査。

初回ワクチン接種時(4ヶ月齢)の身体検査にて心雑音を聴取し、循環器科にて精査。

検査内容:一般状態は良好。身体検査にて、左側心基底部を最強点とする収縮期駆出性雑音Grade3/6を聴取されました。若齢のため先天性の心疾患を疑い、胸部レントゲン検査、胸部超音波検査、心電図検査、血圧測定を行いました。胸部X線検査にて、軽度の肺動脈領域の突出および右心拡大を認め、心電図検査にてS波の増高が認められました。心臓超音波検査にて、肺動脈弁を通過するモザイク血流が描出され、肺動脈血流速の上昇が認められました。

診断:肺動脈狭窄症(弁性狭窄)

治療:β遮断薬を用いた内科治療。
肺動脈血流速測定の結果から中等度と診断し、内服による内科治療を選択しました。

経過:内科治療を始めた後、定期的にモニタリングを実施し、現在(2歳7ヶ月齢)まで臨床徴候を伴わず良好に管理しています。1歳の時に全身麻酔下での避妊手術も実施しました。

肺動脈狭窄は犬の先天性疾患では3番目に発生頻度の高い疾患です。軽〜中等度の症例では、発育は正常で無症状のため、今回のように身体検査での雑音の聴取から精査にて診断されます。現在行っている内科治療は維持するための治療です。重度の症例では開胸やバルーンカテーテルを用いた外科的治療が必要となります。そのため今後も定期的な検査を行い、病態の進行がないかをモニタリングすることが重要となります。