肺高血圧症は、肺の血管に異常な圧力がかかる病気です。通常、血液が心臓から肺へ流れる際には、一定の圧力で流れますが、この病気ではその圧力が異常に高くなります。この結果、心臓や肺に負担がかかり、さまざまな症状を引き起こします。主に、心臓の右側が強い負担を受け、最終的には心不全につながることもあります。症状が進行する前に、早期の診断と治療が重要です。
肺高血圧症の症状は多岐にわたりますが、主なものには呼吸困難、疲れやすさ、胸の圧迫感、運動時の息切れなどがあります。特に、運動後に息が切れることが多く、これが初期の兆候として見逃されがちです。また、場合によっては口唇や指先が青紫色になるチアノーゼも見られます。これらの症状は進行するにつれて悪化し、さらには失神をおこしたり腹水が溜まったりと、日常生活に支障をきたすことがあるため注意が必要です。
肺高血圧症の診断は、いくつかの検査を通じて行われます。最初に行われるのは、聴診器で心音や呼吸音を確認することです。その後、胸部X線や心エコー検査を行い、血管の状態や心臓の大きさや機能を調べることができます。確定診断には右心カテーテル検査が必要です。右心カテーテル検査は、肺動脈の圧力を直接測定するため、正確な診断につながりますが、動物では全身麻酔が必要なため行われることは少ないです。
肺高血圧症の原因は多岐にわたります。肺疾患(慢性閉塞性肺疾患や肺線維症)が原因としておこることもありますが、心疾患や血栓症、さらには特定の薬剤や毒物によるものなど肺以外の原因に伴う二次性の肺高血圧症も存在します。原因疾患によっても治療が異なるので、これらの原因を特定することで、適切な治療方針を立てることが可能になります。
治療法は、肺高血圧症の原因や進行度によって異なります。まずは、生活習慣の改善や基礎疾患の治療が重要です。薬物療法としては、血管拡張薬や抗凝固薬が用いられることがあります。また、重症の場合は酸素療法を検討することもあります。治療には定期的なフォローアップが不可欠であり、獣医師と連携しながら進めることが重要です。
肺高血圧症の予後は、診断の早さや治療の適切さによって大きく変わります。早期に診断され、適切な治療を受けることで、生活の質を向上させることが可能です。ただし、進行した場合には生活が制限されることもあるため、日常生活での注意が必要です。特に、過度な運動やストレスを避け、適度な活動を心がけることが推奨されます。
オーナーとしては、愛犬や愛猫の健康状態に常に目を配り、異常を感じた際にはすぐに獣医師に相談することが大切です。特に呼吸が速い、運動を嫌がる、食欲がないといった症状が見られた場合は要注意です。また、定期的な健康診断を受けることで、早期発見につながります。