2025年07月21日コラム
犬が上腕骨を骨折すると通常は足をついて歩けず、見た目にも折れていそうだとわかります。
しかし、「上腕骨顆内亀裂(じょうわんこつかないきれつ)」という特殊な骨折では、足を浮かせるだけの症状しかでない事があります。
犬が足を浮かせた後にすぐつくようになることはあまり珍しくありません。
「大したことないかな」と動物病院には行かずに様子見で済ませてしまいがちです。
そのため、上腕骨顆内亀裂はご家庭では見落とされやすい骨折の一つです。
今回は、この上腕骨顆内亀裂について分かりやすくご説明します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛犬の前足の異常に早く気づけるよう備えてください。
上腕骨とは、犬の前足(前肢)の上部、肩から肘にかけての太い骨です。
その下端(肘に近い部分)には、顆部(かぶ)と呼ばれる丸みを帯びた部分があり、肘関節を構成しています。
この顆部の中で、骨の表面が割れていないのに、内側にひびが入っている状態を顆内亀裂と呼びます。
見た目には異常がなく、外から触っても明らかな変形がないため、単なる打撲や関節炎と勘違いされやすい骨折のひとつです。
上腕骨顆内亀裂の原因には何があるのでしょうか?
上腕骨顆内亀裂の原因は主に骨の強度や構造です。
成長期の犬の上腕骨顆部には、二次骨化中心と呼ばれる成長板があります。
通常は生後8〜12週齢ごろにくっついて一つの骨になりますが、これがうまく閉じない事があります。
この状態は上腕骨骨化不全と呼ばれ、骨の強度が十分でないまま成長してしまうリスクの一つです。
上腕骨骨化不全は
などに起こりやすい病気です。
さらに、上腕骨骨化不全のように骨の強度が十分でない状態や、構造的に弱い部分に対してジャンプなどの日常的な負荷が繰り返されると、慢性的な疲労骨折を引き起こす可能性があります。
このように上腕骨顆内亀裂は、上腕骨骨化不全や疲労骨折が原因で起こりやすい病気です。
上腕骨顆内亀裂の初期は、強い痛みが出にくいのが特徴です。
見られる症状としては
などがあります。
このような症状がある場合には、早めに動物病院を受診しましょう。
症状があまり重くないため、放置してしまうこともありますが、亀裂が進行すると関節炎や骨折などを起こすこともあります。
上腕骨顆内亀裂を放置して骨折が生じた場合、単純骨折では粉砕骨折となる可能性が高く、治療が難しくなります。
歩き方などに違和感がある場合には、早期に診察を受けることがおすすめです。
上腕骨顆内亀裂は通常のレントゲンでは見落とされることもあるため、必要に応じてCT検査などの詳細な画像検査を実施することが重要ですね。
上腕骨顆内亀裂は、安静やサポーターによる固定で改善するケースもあります。
しかし、上腕骨顆内亀裂は放置していると関節炎や骨折を引き起こすリスクのある病気です。
プレート固定などの外科的治療による根本的な治療が必要になることもあります。
手術の適応やタイミングは、犬の年齢・活動性・骨の状態などによって異なるため、整形外科に対応した動物病院での評価が必要です。
犬の上腕骨顆内亀裂は、成長板の異常や慢性的な骨への負担によって起こる隠れた骨折です。
見た目に大きな異常が出ないため、見逃してしまうと後々大きなトラブルに繋がる可能性もあります。
「時々前足をかばっている」「痛がっていないけど歩き方がおかしい」 そんな様子に気づいたら、ぜひ早めにご相談ください。
当院では、整形外科の診察に力を入れております。
気になる症状があれば、どうぞお気軽にご来院ください。
神奈川県藤沢市の動物病院
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