踵骨骨折とは、後肢の「かかと」部分にある踵骨が外力や過負荷によって損傷する状態を指します。特に踵骨は、アキレス腱が付着あるいは通過する部分であるため、骨折が発生すると後肢の機能に重大な影響をおよぼします。
成長板骨折は、若齢の犬に発生しやすく、骨端板に損傷が加わることで起こります。成長板の損傷は骨の成長障害を引き起こし、肢の短縮や変形をもたらすことがあります。特にアキレス腱が付着あるいは通過する踵骨の骨折では、変形癒合や関節機能の低下が懸念されます。
踵骨骨折の主な原因は、交通事故、高所からの落下、過度の運動などの外傷です。また、競技犬では反復的なストレスが蓄積して疲労骨折を引き起こすことがあります。
踵骨骨折はすべての犬種と年齢で発生する可能性がありますが、特に競技犬や大型犬で多くみられます。競技中の負荷や高い活動性が原因となることが多く、若齢犬では成長板骨折のリスクが高いとされています。
踵骨骨折の症状には、患肢の跛行、腫れ、触診での痛みがあります。また、骨片のずれがある場合、歩行異常や患肢を地面につけない状態が見られることがあります。さらに、踵部分が異常に下がる跛行(蹠行性跛行)を呈することもあります。
踵骨は、アキレス腱の機能に大きな影響を与えるため、ほとんどの場合手術が必要です。
手術では、テンションバンドワイヤーやプレートを用いた内固定が一般的です。この部分は骨を覆う筋肉が少ないため、術後は皮膚の擦過傷やインプラントの露出、感染、癒合不全といった合併症が生じないか慎重に経過観察を行う必要があります。過去の報告では、ピン・テンションバンドワイヤー法よりもプレート固定の方が合併症の発生率は低かったとされています(Perry KL, 2015)。
踵骨は、アキレス腱の機能に大きな影響を与えるため、ほとんどの場合手術が必要です。
また、骨折してから時間が経過するとアキレス腱を構成する筋肉が短縮していくため、整復しにくくなる可能性が高まります。この部位の骨折については、可能な限り早期の診断と早期の治療が望ましいです。
手術後は通常6~8週間の安静が必要で、その間は包帯や副木で固定します。踵骨は他の骨よりも皮質骨(硬い骨)の占める割合が大きく、海綿骨(血流の多いやわらかい部分)の割合が小さいため、骨の癒合には時間がかかる傾向があります(そのため、より長期間固定強度を維持できる内固定が必要)。
その後、リハビリテーションを含む段階的な運動制限が行われ、完全な回復には12週間以上かかる場合があります。また、定期的な検査で治癒状態を確認します。