2025年07月07日コラム
犬の骨折は手術適応となることも多いケガの一つです。
治療法としてあげられる手術の1つに、髄内ピン法という方法があります。
髄内ピン法は金属製のピンを骨の中に挿入して骨折を治す手術です。
しかし、近年では髄内ピン法の適応範囲は限定されつつあります。
今回は犬の骨折における髄内ピン法について、なぜ使われなくなったのかも含めて解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、骨折の治療法のご参考にしていただければ幸いです。
骨折とは骨が完全または部分的に折れた状態のことです。
犬の場合、骨折の原因には
といったものがあります。
特に過度な運動や高齢に伴う疲労骨折は、いつの間にか骨が折れていたという場合も多く注意が必要です。
犬が骨折している場合には、
などの症状が見られます。
愛犬の体の動かし方に違和感を感じたら、早めに動物病院へかかることをおすすめします。
犬の骨折の治療には骨の整復と患部の安静が必要です。
骨の整復はギプス固定や手術で行いますが、犬の場合には手術適応となることが多いでしょう。
ギプス固定に比べ手術は、より強固に骨を整復でき、犬の日常的な動作にも耐えられるからです。
外科手術では、
などを用いて骨の整復を行います。
骨折の場所や程度に応じて、単独またはいくつかの方法を組み合わせて治療します。
中でも髄内ピン法は現在では、単独ではほとんど使われない方法です。
今回は髄内ピン法が使われない理由も含めて解説していきましょう。
犬の骨折において過去に主流だった手術が髄内ピン法です。
髄内ピン法では、骨の中心にある空洞部分に向かってドリルで穴を開け、金属製のピンを挿入して骨を整復します。
金属製のピンが長軸方向に骨を貫くため、曲げる力に強いのが特徴です。
髄内ピン法は現在の骨折の治療には、ほとんど使われていません。
では、使われなくなった理由はなんなのでしょうか?
まず、髄内ピン法にはいくつかのデメリットがあります。
髄内ピン法のデメリットは
などです。
髄内ピンは縦軸のみの固定となるため、捻る力(横方向への負荷)に弱くなります。
捻る力への抵抗性が低いと整復した骨がずれやすく、骨が変な形でくっついたり、骨同士がうまくつながらない危険があります。
しかし、犬の日常的な動作では骨を捻るように動かすことも多いですよね。
そのため、現在では髄内ピン法のみを単独で行うことはほとんどありません。
髄内ピン法は現在でも骨折の種類によっては適応可能な手術です。
例えば、中手骨・中足骨の単純骨折の場合には、可動域が比較的小さいため髄内ピン法での治療も適応になります。
中手骨・中足骨以外の
などでは、髄内ピン単独はほぼ行われていません。
これらの骨では、骨のずれを防ぐためには、体外の固定具と併用する必要があります。
例えば、ピン+プレート(プレート・ロッド法)やピン+創外固定(tie-in法)が選択されるのが一般的です。
ただし、その場合にはピンが外に出るため感染にも注意が必要になります。
髄内ピン法は現在、ごく限られた部位・症例でのみ補助的に用いられる術式です。
髄内ピン法単独よりも、ロッキングプレートやハイブリッド固定のほうが予後良好なケースがほとんどです。
治療法の選択は骨折の種類、犬の年齢・体格、生活環境によって大きく変わります。
手術方法に迷ったときは、整形外科の経験が豊富な獣医師に相談し、複数の固定法のメリット・デメリットを十分に比較したうえで最適な治療を選んであげましょう。
当院では整形外科の経験豊富な獣医師が、骨折の外科手術も積極的に行っております。
犬の骨折の治療のことでご相談がある方はお気軽に当院までご連絡ください。
神奈川県藤沢市の動物病院
辻堂犬猫病院